直近3ヵ年連続定員充足率8割未満の大学一覧(大学無償化法対象外機関となる条件の1つについて)

 今国会において「大学等における就学の支援に関する法律」(通称:大学無償化法)が5月10日に成立しました。
 世間ではこの新法を巡って無償化を受けられる対象の学生の世帯年収条件など支援対象者の要件(個人要件)について「狭すぎるのではないか」といった議論や、相対的に私立大学への進学者に対する支援が厚くなることへの是非、これまで各国立大学が行ってきた低所得層への支援が打ち切りになるのではないかという不安などが、挙がってきています。
 そのような個人要件とは別に、この無償化の対象となる学生を受けれる大学側にも受け入れの資格があるかどうかの機関要件が満たさる必要があるとされています。それが下のシートです。
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 要件としては4つ。
1.実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること。
2.法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること。
3.授業計画(シラバス)の作成、GPAなどの成績評価の客観的指標の設定、卒業の認定に関する方針の策定などにより、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること。
4.法令に則り、貸借対照表、損益計算書その他の財務諸表等の情報や、定員充足状況や進学・就職の状況など教育活動に係る情報を開示していること。

 ちょっと待って欲しい、という要件だと思いました。それは1と2。「実務経験のある教員による授業科目が標準単位数の1割以上」と「法人の理事に産業界等の外部人材を複数任命」。
 これらって、無償化することと何か関係ある?
 無償化したからって、大学教育は大学教育のはず。これを機に妙に産業界におもねった条件を付けるのは本末転倒な話でしょ。もちろん、現実の産業界に資する人材の供給もまた大学の使命の一端ではあるのでしょうが、それとこれとは別の話。別に議論すべきこと。なんか火事場泥棒的な便乗に思えてなりません。
 そして1に関しては、当ブログで確認できた限りでは、当該の議論の中で何をもって「実務経験」と言っているのかは明示されていないと思います(別の施策の議論で明確化されているのかもしれませんが)。例えば、考古学の教授が埋蔵文化財発掘の実務経験者かといえば言えるならそれはそれでOKかもしれませんが、しかし、一般的に文学部や理学部といったどちらかというと実学よりも真理探究型の専攻や学部では、いわゆる財界・産業界的な実務経験者というのが参画しづらい領域かと思います。上記シートの注釈では実務経験者の登用が難しい場合にはその旨を説明すればいいという旨が記載されていますが、あくまで例外扱いであり、簡単に文科省当局が説得されるようなもんじゃないでしょう。
 そうなると、実務経験者が登用できない大学ならば、無償化対象の学生を受け入れることができないとなります。そのことはつまり「貧乏人は人文学や理学といった産業界に利しないような勉強をする資格なし」っていう差別的メッセージになりうるのです。これはおかしい。無償化に関する機関要件として問うべき問題とは異なるべきでしょう。
 1や2を要件に入れることの見直しを求めるものです。

 さて、上記の4要件と並行しつつも別項目として先のシートの下段に「経営に課題のある法人の設置する大学等の取扱い」というのがあり、「次のいずれにもあたる場合は対象としないものとする」となっています。その対象外化される条件は次の3つ。
・法人の貸借対照表の「運用資産-外部負債」が直近の決算でマイナス
・法人の事業活動収支計算書の「経常収支差額」が直近3カ年の決算で連続マイナス
・直近3カ年において連続して、在籍する学生数が各校の収容定員の8割を割っている場合

 この具体的数値の内容は下シートに詳しいですが、この経営面の問題のある大学を除く理由は「教育の質が確保されておらず、大幅な定員割れとなり、経営に問題がある大学等について、高等教育の負担軽減により、実質的に救済がなされることがないよう、支援措置の対象となる大学等の要件において、必要な措置を講じていく」とされており、要は「Fラン救済のためじゃないよ」と姿勢を示すためだそうです。まぁ首相と特定の学校法人とに癒着の疑いが持たれた後だけに、世論を気にすればさすがに甘い顔をしている訳にもいかないんでしょうね。
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 その3つの条件のうちの1つ、「直近3カ年において連続して、在籍する学生数が各校の収容定員の8割を割っている場合」に関して、当ブログでは各大学の定員の充足率についてこれまで集計してきました。そこで、試しに現時点における直近3ヵ年、すなわち2016年2017年2018年に連続で定員充足率が80%未満だった大学を抽出してみました。

【2018年度時点における直近3ヵ年連続定員充足率8割未満の大学一覧】
大学名 (2016年充足率→2017年充足率→2018年充足率)
数値の単位は%(収容定員充足率=在籍学部学生数÷学部収容定員数)

松蔭大学 (29.6→31.0→33.3)
苫小牧駒澤大学 (33.2→38.5→34.4)
高岡法科大学 (41.7→41.2→42.7)
愛国学園大学 (28.5→52.5→62.5)
宇都宮共和大学 (44.0→47.2→54.6)
東海学院大学 (53.0→47.2→47.8)
保健医療経営大学 (54.4→50.9→45.9)
甲子園大学 (54.7→49.0→47.7)
稚内北星学園大学 (54.5→57.5→56.8)
東邦音楽大学 (61.5→56.2→53.8)
名古屋産業大学 (49.7→58.0→64.0)
開智国際大学 (47.1→60.0→70.2)
長崎ウエスレヤン大学 (60.5→59.1→60.2)
上野学園大学 (70.5→60.3→51.7)
山梨英和大学 (67.8→55.6→59.8)
川村学園女子大学 (58.1→59.8→65.7)
九州情報大学 (55.7→59.7→68.5)
筑波学院大学 (55.5→62.4→69.5)
新潟工科大学 (56.4→62.4→68.9)
東亜大学 (63.7→60.0→64.8)
愛知工科大学 (54.3→62.9→71.5)
大阪人間科学大学 (59.5→62.4→66.8)
関東学園大学 (59.1→64.6→65.1)
清泉女学院大学 (59.2→55.3→74.7)
静岡英和学院大学 (62.7→63.1→63.5)
札幌国際大学 (61.1→64.1→65.0)
名古屋音楽大学 (60.8→61.8→67.6)
愛知文教大学 (56.9→61.4→72.6)
東京神学大学 (66.2→65.9→58.8)
医療創生大学 (55.9→63.4→71.7)
平成音楽大学 (67.0→66.5→58.5)
奥羽大学 (62.2→64.0→65.9)
神戸山手大学 (60.6→60.0→72.7)
宮崎国際大学 (60.2→62.0→71.3)
広島国際学院大学 (58.8→69.1→66.2)
神戸医療福祉大学 (61.2→67.4→65.6)
東京純心大学 (59.0→63.7→72.7)
浦和大学 (70.5→64.6→60.4)
郡山女子大学 (64.6→64.2→66.9)
武蔵野学院大学 (58.8→63.9→73.3)
東京富士大学 (59.5→63.8→74.0)
身延山大学 (64.4→70.8→62.5)
恵泉女学園大学 (73.8→62.9→61.2)
浜松学院大学 (68.4→67.0→63.3)
日本映画大学 (66.6→62.3→71.3)
姫路獨協大学 (65.2→67.5→68.3)
星城大学 (63.4→65.1→73.6)
平安女学院大学 (64.5→65.9→71.7)
石巻専修大学 (65.1→67.2→70.1)
京都ノートルダム女子大学 (69.2→67.7→67.8)
嘉悦大学 (65.2→64.2→76.2)
京都精華大学 (72.3→68.1→65.7)
北陸大学 (65.4→68.2→72.5)
日本経済大学 (61.9→68.8→76.3)
富士大学 (60.9→69.6→76.9)
吉備国際大学 (74.0→68.0→66.5)
札幌学院大学 (67.4→68.2→73.8)
愛知学泉大学 (76.0→72.9→60.6)
宝塚大学 (65.7→66.7→77.1)
杉野服飾大学 (70.0→67.6→74.5)
八戸工業大学 (70.4→71.6→71.6)
第一工業大学 (68.1→70.9→74.7)
広島文教大学 (75.0→69.0→70.1)
エリザベト音楽大学 (73.3→69.1→71.9)
星槎道都大学 (64.8→74.1→76.8)
弘前学院大学 (70.8→70.9→75.0)
武蔵野音楽大学 (69.4→72.0→75.4)
ノースアジア大学 (73.2→72.5→71.2)
岐阜女子大学 (75.7→72.7→68.6)
東北文化学園大学 (68.9→70.4→77.7)
九州保健福祉大学 (77.0→73.4→69.8)
福島学院大学 (69.5→75.0→75.7)
足利大学 (68.6→73.3→78.5)
帝塚山学院大学 (76.0→72.0→72.5)
岡崎女子大学 (69.0→74.0→77.8)
相愛大学 (69.3→73.0→78.6)
札幌大谷大学 (74.8→75.1→71.4)
東北生活文化大学 (75.2→72.5→75.0)
広島女学院大学 (75.1→70.4→77.8)
四国学院大学 (73.3→74.2→76.1)
徳島文理大学 (76.4→74.9→73.6)
札幌大学 (75.7→74.3→75.0)
新潟経営大学 (76.4→76.3→72.8)
倉敷芸術科学大学 (76.8→74.9→75.9)
名古屋造形大学 (73.0→75.7→79.5)
太成学院大学 (77.5→75.5→76.7)
山陽学園大学 (76.1→75.0→79.5)

 以上のように、直近3ヵ年連続定員充足率8割未満の条件に87大学が該当しました。
 ただ、この数値には秋入学の加算がされいません。また、大学院生は条件に含まれないと見られますが、通信制課程の学生数・収容定員数が含まれるか否かは提示されている資料からは確認できませんでした。そのため、当ブログの数値が文科省が判断する数値と合致したものであるかどうかはまだ不明です。
 また上述のとおり、経営的数値を含めた3条件の「いずれも」が揃っている場合が対象外となるため、この87大学が即対象外というわけでは当然ありません。
 しかし、昨年末に「高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針の概要」の発表以降、上記に挙げた大学のうち神戸山手大学が関西国際大学に吸収合併されることになった他、保健医療経営大学広島国際学院大学とが学生募集停止を発表するなど、これを機に対象外大学とされる前にということか、継続を断念する大学が現れてきています。

 他方、この対象外大学がいつ発表されるか分かりませんが、多分現在調査中であろう今年5月の実績数値が用いられるとすれば、2017年・2018年・2019年で直近3ヵ年となります。
 そこで、上記以外で2017年と2018年の2ヵ年連続で定員充足率が80%未満だった大学、すなわち「リーチの掛かった大学」を抽出すると以下の11大学となりました。

【2017年と2018年の直近2ヵ年連続定員充足率8割未満の大学一覧】
大学名 (2016年充足率→2017年充足率→2018年充足率)
数値の単位は%(収容定員充足率=在籍学部学生数÷学部収容定員数)

岡山学院大学 (85.0→73.1→66.9)
聖徳大学 (85.1→74.5→66.7)
名古屋芸術大学 (80.4→73.1→75.9)
中国学園大学 (81.7→76.2→75.1)
姫路大学 (80.8→76.4→76.5)
千葉科学大学 (83.2→79.9→71.0)
活水女子大学 (82.7→78.6→78.3)
神戸松蔭女子学院大学 (84.3→78.2→78.7)
鈴鹿大学 (88.0→74.2→79.8)
埼玉学園大学 (97.4→75.1→71.7)
兵庫大学 (93.2→75.8→75.6)

 繰り返しになりますが、収容定員充足率だけで対象外となるわけではありません。3条件全て当てはまってからです。
 ただし、上記の計98大学の多くは、芸術系を除き、これまで出版されてきた『危ない大学・消える大学』で消える大学候補とされてきたところです。
 同書の四半世紀に渡るシリーズの中で、それでもなかなか大学が潰れることは少なかったのですが、今回の大学無償化対象外とされることで淘汰へのトリガーが引かれることに、いよいよなるのかもしれません。

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