科研費獲得量からみる各研究分野の主要大学 (1)全体集計

(2015/2/8『科研費データベース』の追加公開等に伴いデータ更新
1.科研費とは
 大学での各研究者の研究資金は、大学から支給される研究費以外に、大学外から得る資金などもあります。
 大学経営が厳しくなる中で、その大学外からの資金、特にいわゆる「競争的資金」というのものが重要視されています。
 その中でも文部科学省関連の「科学研究費助成事業」(科研費)が最も知られており、人文学・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり対象とした研究資金です。競争的資金と言われるとおり、審査を通して意義のある研究課題に資金が配分される仕組みです。

2.科研費からみた大学の研究力の把握データ
 この科研費ですが、ある意味で各研究機関がどれだけの研究能力があるかの指標にされてきています。
 文部科学省では、本年度(平成26年度)より「科研費(補助金分・基金分)の配分について」のプレス発表において、大学などの研究機関別の獲得金額順ならびにこれまでの分野別の獲得研究案件本数などを公表するようになりました。
 これで各大学の研究力の比較ができるのですが、①単年度だけだとその時々の変動に左右される、②分野別が分断され過ぎていて、分野間や区分トータルでの比較などが行いづらい、などの問題があります。
 また、この科研費について「日本の研究.com」では『科研費統計データ』として比較可能なサイトも立ち上がってきていますが、上位機関だけの比較に留まるとともに、目的に応じた合算がしづらく、タイムラグもあるようなので、自分で比較してみるデータを作ってみました。

3.「延べ本・年」「本/年」の考え方
 今回のデータは2010年度から2014年度に実施された科研費研究について抽出し、同期間内での「延べ年・本」そして「本/年」から各大学の研究の取り組み状況を把握しようというものです。
 データは国立情報学研究所の『科研費データベース』より、研究の最終年度が2010年度以降のものを研究細目別あるいは研究種目別に取り出しています(2015年1月末時点でアップロードされたものまで)。
 この抽出データから各研究機関の各研究の2010~2014年度内の「延べ年・本」の総和を算出しています。「延べ年・本」というのは、各研究の1年分を1本として5年間の取り組み量の計算です。
 例えば、
 研究期間が3年の研究案件が5本の場合、3×5=15年・本
 研究期間が1.5年の研究案件が2本の場合、1.5×2=3年・本
って具合で、これを総和したものです。
 そして年平均本数の「本/年」は、この「延べ年・本」を期間内の5年で除した値です。

 また、今回の算出は2010~2014年度の5年度間のみですので、例えば研究の開始が2009年度で終了が2012年度の場合、研究期間全体は4年分ですが、2010年度から2012年度まえの3年分のみを計上しています。年度途中から開始のものは日割りで1.5年分や0.76年分などとして計上しています。ですので、すべてが整数になるわけではありません。
 さらに、1本の研究案件が複数の細目に跨る場合は、細目数で按分し、1細目に対し0.5本や0.333…本などとなっています。
 なお、研究機関については、代表研究者ベースで計上していますが、途中で異動があった場合にその異動回数に応じて研究機関ごとに按分をしています。1本の研究案件が2機関に跨る場合は1機関あたり0.5本、3機関に跨る場合は0.333…本などと処理しています。この際、2010年度以前からの研究案件で2010~2014年度内に関わりのない研究機関が按分に含まれてしまう場合が生じますが、何年度にどの機関が担当したかのデータ処理が難しいため、そのまま按分をかけています。現時点でのデータの限界ですのでご了承下さい。

 この「延べ年・本」「本/年」を使うことにより、トータルで上記した①②の問題は緩和されるます。同時に、獲得金額の比較の場合には長期にわたる場合にインフレーションなどの影響で同額での比較は困難になる、研究分野によって必要経費に差があるので研究の軽重を金額では比較できず合算が妥当ではない、といったデメリットを緩和出来て、「期間の長い案件=大きな案件を沢山確保する」ことを良とする判断で妥当な比較が可能かと考えます。もっとも、現実的にインフレは進んでいないし、分野間の1本あたり経費も10倍も20倍も違うってことでもない(上記、文科省プレス資料のp45~46参照)のが現状ですけどね。それでも分野間では1本あたり平均直接経費最高額の生物科学(4,814千円)と最低額の看護学(1,099千円)とは4倍以上の差はあるか。ま、実は、何より金額のテキストデータの処理が大変だったので、それを避けたのが動機としてありますけどね(汗。

 ということで、この抽出の結果、2010~2014年度に取り組まれた科研費研究の研究案件本数は183,140本、延べ年・本は373,043年・本、年平均本数は74,609本/年となりました。

4.大系別集計結果
 科研費の研究分野細目は平成26年度の「系・分野・分科・細目表」に基づきました。この分類による系別に3で抽出したデータを集計すると、下図の通りとなります。
画像

 結果的に、本数と本/年とは傾向は、ほぼいっしょでした。
 本/年の結果でみると、いわゆる一般に文系といわれる人文社会系が19.9%、理工系が22.7%、生物系が38.9%、文理など各種分野横断的な総合系が14.0%、その他が4.6%でした。文系が約2割に対し、理工系+生物系のいわゆる理系が約6割と、文系より理系のほうが3倍ぐらい多いという傾向になっています。
 なお、「その他」というのは、研究種目として新学術領域研究や特設研究分野といった新興の研究案件で体系的に未分類のもの等が含まれます。

次回に続く

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